(肩こりにもつながる腰痛のはなし)第3話
その2 骨盤がゆるむタイプの腰痛「ゆるみ腰」
「ゆるみ腰」という名称は、たぶん聞いたことがないことでしょう。
それもそのはず、いちおう私が命名した「ある腰の状態」のことです。
ではこの「ゆるみ腰」って一体どんな状態なのでしょうか。
ある同業の先生はこの状態のことを「なまり腰」と呼んでいます。
つまり腰がなまって起こる腰痛だというのです。
呼び方は違えども、からだの熟練専門家であれば、
どんな状態かは、だいたい想像がつくと思います。
確かに、なまり腰と呼ばれるだけあって、傍目から見ると、
腰のキレが無くなり、動きがやや老化気味に写ります。
すべての「ゆるみ腰」の人に共通しているのは、
歩行不足(運動不足とイコールではない)があることです。
それでは、気になる「ゆるみ腰」の症状について、
もう少し突っ込んでみることにしましょう。
たとえば、朝起きあがるときに腰の下の方が重い、だるく動きにくいが、
なぜかしばらく動いているとスムーズになってくる。
初期にはこんな症状が出ます。
20代の若い人には、もうひとつピンとこないと思いますが、
40歳以上で運動不足の読者の中には、
「私のことかしら」と、ドキッとする方も多いことでしょう。
じつは日常、治療現場の中で一番多くみかける、
腰痛のタイプが「ゆるみ腰」なのです。
それだけ、現代人の体はなまっているということでしょうか。
先日、ある70代後半の患者さんとお話しして気づいたことがあります。
そのかたは、とにかく歩くのが趣味で、大阪-伊勢。大阪-福岡などを、
目的地まで、一本の道をつぎはぎしながら何回にも分けて歩かれています。
現在は、琵琶湖一周中とのことでしたが、
1日40km以上歩くときもあるとのことです。
「ホーッ。すごいですね」と感心していると、
「昔の旅人は、1日八里(約32km)歩いていたそうですよ」
という話も出てきました。
なるほど、今の人間(わたしも含めて)は本当に歩いていないなぁと、
つくづく再認識させられました。
ふだんは、普通の人よりは歩いているという自覚があったのですが、
しょせんは、週に12~13km程度にすぎません。
そのぐらいで、あまり偉そうなことは言えないですね。反省。
そのわたしよりも、歩いていないひとが多いのですから、
そりゃ、体の不調が出て当然といえば当然かも知れないですね。
その最たるものが「ゆるみ腰」だというわけなんです。
つぎに、歩行不足になると、なぜ「ゆるみ腰」になるのでしょうか。
それを理解するためには、まず骨盤環の中にある、
仙腸関節(せんちょうかんせつ)のしくみを知る必要があります。
骨盤はお尻の後ろにある仙骨と、
左右一対の寛骨という大きな骨で構成されている環状の骨格です。
この中には泌尿器、生殖器、直腸などが入っており、
大部分を繊細な膜で覆われて神経がいっぱいの重要な部分です。
また、体の中心にある腰の下半分を占めており、
ちょうど家に置き換えて考えると基礎にあたる部分だといえます。
ふつうは、まず左右のどちらかの仙腸関節がゆるみます。
普段立った姿勢で体重が乗っていない方からゆるむのが特徴です。
両方の脚に均等に体重がかかっていると思うかもしれませんが、
たとえば、台所で立っているとき、
どちらかに体重が偏っていないでしょうか?
たとえば、ホームで電車を待っているとき、
左右のどちらかに、体重がかかるクセはありませんか?
無意識のうちに、どちらかに偏っている場合が多いのです。
それが長期間つづくようになると、
体重が乗っていない側に障害が出ます。
こうして「ゆるみ腰」になるのです。
家の中にいてほとんど外出しない方や病後や産後の方などは、
両方の仙腸関節とも「ゆるみ腰」になっていることも少なくありません。
左右どちらにも、圧倒的に体重が乗っている時間が少ないからです。
始めに書いたように、「ゆるみ腰」も初期の段階では、
少し歩けば楽になってくるので治療を必要としませんが、
この状態が続けば、間違いなく腰痛症になっていきます。
そして、肩こり他全身に不調が広がっていくことになります。
【ポイント】
現代人は歴史的に見て歩く量が少ない。
そういう背景から生まれた症状の代表選手が「ゆるみ腰」。

コメント