(肩こりにもつながる腰痛の話)
第30話『内臓関連の腰痛』
前回は椎間板ヘルニアによる腰痛のお話しでした。
今回は、内臓と関連する腰痛についてです。
(内蔵関連の腰痛とは)
内臓と腰痛の関係について、
現代医学では、
痛みを感じる場所と原因部位が違う場合に、
関連痛といって、その関連性は認められています。
しかし、日常的にはあまり重要視されていません。
その証拠の一つとして、
実際に患者の体に触れる触診が減ってきています。
その裏に臨床検査や画像診断の発達があるのでしょうが、
現実はそうした傾向があります。
一方東洋医学では、痛みを感じる場所と、
原因部位が違う場合があることは常識となっています。
特に、東洋医学で使う気の流れやツボなど、
経絡に慣れ親しんでいる者にとっては、
背中や腰と内蔵が関連しあっていることなどは、
日常的でごく当たり前のことです。
一例として、
背中から腰にかけて背骨の両脇には、
上下方向に内蔵と関係が深い重要なツボが並んでいます。
鍼灸治療は、
内蔵の機能失調や慢性疾患に強いことはよく知られていますが、
事実、この腰背部のツボを使う頻度は高いです。
(具体的な内臓と痛みの関連)
一般的には、ある臓器が悪いとこのあたりが痛む、
といった対応図みたいなも見かけます。
それは、簡単に入手できるでしょうから、
その手のどこでも手に入る情報はここでは書きません。
日常の臨床で、内臓関連の腰痛は頻繁に見かけますが、
実際に確認したもので、印象的なものを取り上げましょう。
〈骨盤の後ろが痛い場合〉
・Aさんの場合
骨盤の下の奥の方が痛むという症状でした。
明らかに腰の関節や筋肉、神経痛ではない鈍痛でした。
以前からお話ししている「ゆるみ腰」「しまり腰」などの、
骨盤の症状は、一般的にまだ理解途上なので、
混同される可能性はありますがそれとは全然違います。
理学療法を行っても全く症状は改善しませんでした。
既往歴や症状から、泌尿器関係を疑いました。
バックナンバー〈ゆるみ腰〉
http://kenkokagaku.typepad.jp/blog/2008/09/post-13aa.html
バックナンバー〈しまり腰〉
http://kenkokagaku.typepad.jp/blog/2008/09/post-f70b.html
ちょうどAさんは泌尿器科に通っておられたので、
詳しく検査してもらうようにアドバイスしました。
ところが、大丈夫ということで調べてもらえませんでした。
後で聞いた話ですが、膀胱ガンでした。
・Bさんの場合
骨盤の後ろ広範囲に鈍痛があるという症状でした。
明らかに腰の関節や筋肉、神経痛ではない痛みでした。
理学療法を行っても治療後だけ良くて、すぐに元どおりでした。
既往歴や症状から、婦人科受診をすすめました。
痛みの原因は、以前からあった子宮筋腫が大きくなったことでした。
その後、手術で筋腫を摘出すると、痛みはきれいに消失しました。
・AさんBさんともに、関節や筋肉、神経痛との違いは、
左右どちらかではなく常時奥の方から痛む鈍痛だということです。
骨盤の後ろで??な痛みは、泌尿器、生殖器などを疑います。
〈骨盤の上、腰椎が痛い場合〉
もう少し上方に移りましょう。
・Cさんの場合
腰椎下の方に鈍痛がするという症状でした。
指圧すると気持ちが良いと喜ばれますが、
翌日には、もとの症状が出ます。
これも徒手検査で??な部分があったので、
大病院で診てもらうことにしました。
結果は、ガンの骨転移による痛みでした。
この例のように「変だな」という直感がある場合は、
直ちに検査してもらうことをアドバイスしています。
・Dさんの場合
腰椎の中程、ちょうど腰骨が反っている部分の両脇に、
奥の方から広がるような鈍痛があります。
指圧すると少し楽になりますが、
しばらくするとまた痛みが出てきます。
治療を繰り返しても改善しませんでした。
過去に腎機能でひっかかったことがあるようですし、
その手の症状も出ているので間違いありません。
大病院での検査の結果は、やはり腎臓疾患で、
入院して治療することになりました。
腰椎の中程で奥の方から鈍痛がある場合は、
疲労の蓄積、ゆるみ腰や椎間関節性の痛みがほとんどですが、
全身倦怠や血色の悪さ、足のむくみや尿量の変化など、
腎泌尿器系の症状がある場合は、
このように腎臓の機能障害や病気が考えられます。
〈腰よりの背中が重苦しい場合〉
・Eさんは、背中の下の方が張っているので、
とにかく、ほぐして楽にして欲しいとの要望です。
確かに背中と腰の境目辺りから上よりが硬くこっています。
背中をほぐしながら話を聞いてみると、
最近、胃の調子が悪いとのことです。
さっそく病院で胃カメラで調べてもらい胃潰瘍でした。
Eさんのように胃の機能に変調を来した場合は、
胃の裏あたりの背中が硬くこります。
軽い症状では、そこをほぐすだけで良くなります。
(病気か未病かで対処法は異なる)
骨盤や腰背部周辺の痛みや凝りが出る場合。
骨盤は泌尿器、生殖器。
腰椎は腎臓。
胸椎との移行部あたりは胃。
というように内臓との関連痛や凝りという形で、
病気になる前の段階で信号が出ることも多いのです。
これが未病の段階ですが、
この時点であれば、
各種代替療法で対応できます。
そして、検査しても異常が見られない段階なら、
病気を回避できる可能性が残されています。
だからこそ、早期に検査を受けることは大事です。
そして、手遅れで病気と診断されたら、
医師の指示に従うことが大切です。
(未病の場合、対処法はどうする)
対処法の内容はケースバイケースですので一概に言えませんが、
たとえば、胃の場合は定番の方法があります。
胃の六灸といって背中の胃に関係する6つのツボにお灸をします。
昔と違い、直接灸をすえるのではなく温灸を使うことが多いです。
実際、これを繰り返すことで胃潰瘍が治った例もありますし、
ちょっとした症状であれば、
薬を飲むより効くという声も多いです。
また、自分でできる方法では、
毎度おなじみの歩行療法があります。
これも、馬鹿に出来ないぐらいよく効きます。
身長によって適正スピードが変わりますので、
165cmの人を例にお話しします。
胃の場合は、
ゆっくりしたペースで40分ノンストップで歩きます。
2.3km程度の距離になります。
これが胃の機能を回復させるのに適したスピードです。
腎臓や泌尿器系等の機能低下であれば、
少し速いペースでやはり40分ノンストップで歩きます。
3km程度の距離を歩けばいいでしょう。
たとえば、胃弱の人が胃の機能を強化したい場合は、
週に3回以上、2.3kmの距離を40分で歩けばいいのです。
そうすれば、胃の機能はどんどん正常化していきます。
詳しくはバックナンバー「歩行療法5」をどうぞ。
http://kenkokagaku.typepad.jp/blog/2008/09/post-ad05.html
--【ポイント】----------------
内臓の異常が腰背痛や凝りという信号で現れることに注意。
------------------------
