44話 『むちうちの一症例』
前回は、むちうちの正しい治し方についてでした。
今回は、むちうちの一症例をお伝えします。
土田雅彦さん(仮名)は46歳の男性。
7年前、自動車運転中、交差点で止まっていたら、
逃走中の車に後ろから追突され、そのまま逃げられたとのこと。
痛みがあり、直後に病院で検査を受けたものの、
案の定、X線検査で骨には異常なし。
捻挫ということで、頚椎牽引(通称、首つり)にて悪化、
自身の判断で通院を中止されました。
以後、地元でいろいろな治療をされたようですが、
結局、「治してくれそうなところがない」状況で、
良くならずに7年が経過したということです。
たまたま、ネットを通じて当院に来院されました。
日本海側から大阪市内まで車で3時間かけての通院です。
現在の症状は、
事故後から良くなるどころか、悪化している様子です。
具体的には、
首が左右に回りにくい(左20度、右40度)正常は90度
首の前後屈、うつむいたり上を見上げたりが痛くてできない。
仰向けから起きあがるときに首が痛くて手で支える必要あり。
首を左右に倒すことが痛みで困難。
という症状、お気の毒そのものです。
「むちうち」といっても慢性期です。
にもかかわらず、急性期も真っ青のような症状に、
当初、あ然としました。
わたし「7年間もこの状態なのですか?」
土さん「そうなんです。むしろだんだん悪うなってきました。」
わたし「近くに治してくれそうなところは無かったのですね?」
土さん「むちうちは治らんといわれまして。」
「しょうがないとあきらめかけていたところです。」
「そんな時に、偶然ネットで見つけたものですから・・」
「読んでいて、一回いってみようと決めたのです」
参考までに http://www.kenkokagaku.com/hanbai.html
わたし「遠路はるばる大変でしたね。」
「お話は、よく分かりました。」
「それではさっそく検査してみましょうか。」
(検査ベッドにて、さっそく徒手検査開始。約10分)
1.立位での全身検査
きおつけの姿勢で上体を前屈、後屈をして頂き、
全身の動き方、動く範囲、張りや痛みを調べます。
2.座位での検査
ベッドに腰掛けた状態のまま、両腕を軽くくんでもらい、
両肩を使って背中を左右に捻ります。背中の捻れ度、痛み、
張りなどを調べます。これで足腰との関連も分かります。
つづいて、首の回旋2種類、前後屈、側屈など首の状態を
把握します。つぎに、両腕の知覚検査、握力、関節の動きを調べます。
3.仰向けでの検査
ベッドに仰向けに寝て頂き、骨盤の押圧、母趾の背屈力、
足関節の動き4種類、股関節の動き3種類、下肢の知覚検査、
つづいて、顔面の知覚検査、ゆがみや腫れ、発熱の有無を調べます。
4.うつ伏せでの検査
頚椎、胸椎、腰椎、仙骨の圧痛、足の持ち上げ、膝の屈曲、
などを調べます。
問診と併せて上の検査をすることで様々な情報が読み取れます。
各パーツの障害や歪みをはじめ、その連結を通じての全身の歪み。
過去の外傷の瘢痕、内臓と関連などを読み取ります。
(検査が終了して骨模型を使って説明をする。)
わたし「悪化している理由は、腰の症状が加わったからです。」
地元の祭りの御輿担ぎで痛めた様子。
「首と腰の両方を治療する必要があります。」
「治療法は・・・を予定しています。よろしいですか。」
土さん「お任せしますから治してください。」
わたし「わかりました。毎回少しずつ良くなるはずです。」
「さっそく治療に取りかかりましょう」
その後、腰部と頚部を15分氷冷しながら、
肩と腰の筋肉を緩めるために低周波を装着する。
終了後、仰向けにて、
頭軸圧法という首から上を整復するソフトな手技を行う。
つづいて、ウォーターベッドでうつ伏せになり、
背骨まわりの潤滑を改善するために、
リダクターという機器を背中に滑らせて整復する。
最後に、ウォーターベッドで仰向けになり胸郭を圧迫し整復する。
これらの整復に20分ぐらいかかる。トータル1時間弱
わたし「終わりましたが、具合はいかがですか?」
土さん「首が軽うなりました。」
「よう動くようになりました。」
「つぎはいつ来たらいいですか?」
わたし「できれば1週間に1回ペースで来院して下さい。」
以後、1週間~2週間ペースで治療し順調に推移する。
より確実に治すために、家では、一日40分の歩行療法と、
歩行後、熱を持った首と腰の氷冷をしてもらう。
2回目の治療から、骨盤の治療を加える。
途中、祭りの御輿を担ぎ、腰、肩を痛めて、その治療も行う。
首の痛みに限れば2ヶ月で消滅する。
3ヶ月弱後完治し、すべての治療を終了する。
そして最終回
土さん「むちうちで7年間苦しんでいた首が、
治療してもらって、おかげでようなりました。」
「ありがとうございました。」
ということで、完治しました。
重度の症状を抱える慢性症としては、上出来の経過でした。
急性の場合は、交通事故が抱えるメンタルな問題がなければ、
この症例と同様に良好な経過をたどることが多いです。
土田さんは、素直な方で治療に全面的に協力して下さいました。
信頼関係のもとに、全力で治療出来たことが、
このような好結果に繋がったのだと確信しています。
今回の症例が、何らかの参考になれば幸いです。
次回は最終回、
急性期の交通事故治療が抱えるメンタルな問題についてです。
---【ポイント】----------------
むちうちの多くは信頼関係のもとに計画的に治療すれば治る。
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