前回は、頭部うつ熱による熱中症で実際に倒れた
私の体験談をお話ししました。
この頭部冷却シリーズは前回で終了する予定でしたが、
9月に入って、熱中症の初期症状でもある、
頭部うつ熱の患者さんが、さらに増えてきました。
そして、極めつけの出来事が起こりましたので、
あと1回だけ『頭部冷却療法』にお付き合い下さい。
じつは、うちの祖母が熱中症になってしまったのです。
この時の経過を書きますので、ぜひ参考にして下さい。
8月30日、祖母が熱を出していると、母からの連絡がありました。
祖母は95歳です。認知症はありますが、ふだん内臓は健康です。
この日はデイサービスで、施設に行っていました。
そこで、様子がおかしいので検温してみると、38度あったので、
途中で帰ってきたようです。
翌31日午前、かかりつけの診療所で診察を受けたところ、
風邪引きということで、解熱剤、抗生剤、咳止めが出ました。
せきは、ほとんど出ていませんでした。
9月1日は熱は37.5度に下がったものの、
1日中元気なく寝込んでいたようです。
「クーラーをつけっぱなしにしていたので冷えて風邪をひかせたのかも」
と母は少し反省している様子です。
そこで症状をよく聞いてみると、熱の割に頭と腕が熱いとのことです。
これは熱中症の症状の可能性が高いのです。
初期には、「うつ熱」といって、頭を始め、臓器など局所に、
熱がこもっていることが多いからです。
体温は平熱か微熱程度で、この状態がつづいて高熱が出ます。
2日になり、夕食後におう吐したので、電話がかかってきました。
熱も38.6度の高熱に騰がってきたということです。
おそらく、前日は解熱剤でいったん熱が下がっていたのでしょう。
ただ、原因が残っているので、また騰がってきたのだと思います。
「熱中症の可能性が高いので、明日朝診てもらうように」言いました。
それなりの対応をしてもらえるだろうと考えたからです。
3日午前受診したと連絡が入りました。
やはり風邪とのことで、このまま様子を見る事になったそうです。
熱は、38.5度前後の様子です。
直感的に、「このままでは危ない」と感じましたので、
仕事のお昼休みに急行しました。車で30分ほどです。
観てみると、ふらふらで立てないし、声も出しにくいような状態。
一見して、かなり弱っている様子です。
熱は37度台に下がってはいましたが、腕と頭は異常に高温です。
熱中症の症状に間違いありません。
さっそく、クーラーボックス一杯に用意した
2kgほどのチップアイス(スーパーによくある小さな氷)を使って、
氷のう4つと水枕に氷を入れました。
すでに横になっていましたから、枕の上にゴム製の水枕、
首の付け根の両横に氷のう2つ、
こめかみあたりに残りの氷のう2つをあて、
ゴムバンドでとめて、処置をしました。
この晩、母にスーパーで氷をもらってきてもらい、
再度同じ部位を冷やしました。
お昼との違いは、足を温めてもらったことです。
少し寒気がした場合は、足を温めることが必要です。
なぜなら、熱がある部分は熱取りが必要ですが、
熱がない部分は少し冷えるので、
暖めてバランスをとることが大事だからです。
おかげさまで、4日朝には36.7度に下がりましたので、
他の4つは取り去り頭の下だけ続けて冷やしてもらいました。
4日の晩には、平熱の36.2にもどりました。
5日には、いつもどおりの
元気なおばあちゃんに戻ったとの連絡を受けほっとしました。
3日の話に戻りますが、
わたしが駆けつけたときに既に水枕は、使っていましたが、
まったく機能していませんでした。
理由は、氷の量が少なすぎることが一つ、
そのうえにタオルを二つに折って巻いていたので、
冷却力がほとんど無く、頭の熱を取る力が弱すぎるのです。
水枕は、直にあてるほうが遙かに効果が出ます。
濡れるのが気になる場合は、ハンカチ程度を敷いて下さい。
このパターンは日常の指導でも、よくあることです。
うつ熱の場合、局所を氷水で冷やすのは、全く安全なのです。
そして、かなりの氷が必要なのです。
この時も、親父が「そんなに冷やして大丈夫か?」と尋ねてきました。
高熱の原因は、体の中、特に頭の中に熱がこもることです。
だから、解熱剤は対症療法で、一時しのぎに過ぎません。
一番大事なのは、いつも言っているように原因療法なのです。
この場合は、からだにこもった熱を取り去ることです。
それも、中枢を守ることが命を守ることなのです。
だから、頭を冷やす必要があるのです。
中枢である脳が高熱になると、自律神経をはじめコントロール機能が
うまくいかなくなるのです。最悪は死に至ります。
熱中症の熱を取る場合、この例のように大量の氷が必要です。
それを、中枢である頭を中心に、
この例では腕が高熱になっているので、首の付け根の横か脇の下。
背中が高熱の場合は、頭から首の後ろ、背中の上部まで氷のうを並べます。
胸の場合は、頭と、首の付け根の横、胸の上に氷のうを当てます。
これぐらいやらないと、歯が立たないのです。
シップや冷却シート、ちょっとした保冷剤などでは、
全くといっていいほど効果がありません。
家事になっているに、一杯のバケツで火を消せないのと同じです。
ここが大切なポイントなのでよく理解して頂きたいと思います。
前回(94号)でお話しした、わたしの体験談と併せて参考にして下さい。
この例のように、お医者さんも誤診することはあります。
自分の体は自分で守るという意識をもって下さい。
【ポイント】
熱中症の初期は気づきにくいので注意。
熱中症になったら一番大切なのは、
熱に弱い中枢である脳を守ること。
だから、安全な氷水による冷却が必要なのだ。
